本科研最終年度の平成23年度の研究実施計画では(1)現地調査の実施、(2)学会発表、(3)論文執筆、の三点を掲げていた。それぞれについて実施状況を報告する。 まず現地調査では予定通り、8月から9月にかけて約一ヶ月間エチオピア南部において現地調査を久々に実施することができた。救荒食や保存食に関する知見を複数の民族社会において得ることができた。その成果発表は今後行っていく所存である。 学会発表に関しては、予定していた通り、5月下旬に弘前で開催された日本アフリカ学会において調査対象とするエチオピア西南部のマロにおける集落放棄の問題を議論した。またそれをもとに一部の内容を分析し直したものを11月に金沢で開かれた北陸人類学研究会において発表を行った。 論文執筆についてはすでに投稿していたマロの集落放棄に関する論文を改稿の後、再投稿を夏から秋にかけて行い、その論文は近く『アフリカ研究』に掲載される模様である。マロの社会は定着的な農耕社会であり、エチオピアの他の社会と比べた場合、その生業構造からは高い持続性をもつと思われるか、マロをとりまる政治経済的な環境によりマロの一部の低地においては集落がつぎつぎと放棄され、人びとは移住を余儀なくされてきていた。この問題について本論は詳しく議論を行っている。 また11月頃から1月頃にかけてはマロにおける協同労働の変容について分析する論文の大幅な改稿作業を行った。協同労働とは日本の民俗社会でいうユイにあたるものであるが、これが今日のエチオピアにおいても急速に変容しつつあり、その要因と影響を考察している。実質的に論文は完成しているが、再調査を行った上で発表する予定である。 2月から3月にかけては分担者として参加する別の科研のテーマに関する論文を執筆した。
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