平成21年度に行う活動として当初予定していた活動(交付申請書記載)は、大別すると(1)カンボジア、ラオス、ベトナムにおける派遣中の青年海外協力隊員を対象とした国外調査、(2)帰国した元隊員、派遣前研修を受けている隊員、派遣前研修で文化人類学関係の講義やワークショップを担当している講師を対象とした国内調査、(3)調査で得た知見の集約と検討に関する活動、の三つであった。このうち(1)については、研究協力者(大橋亜由美、放送大学非常勤講師)がラオスにおいて隊員とその活動の関係者(協力隊調整員や国際協力機構短期専門家など)を対象とした聞き取り調査を行い、派遣中の隊員の活動における文化人類学的知見(文化人類学の視点、方法論、考え方などに関する知識)の活用状況などの具体的な把握に努めた。これに対して、研究代表者は、ほかの業務との時間的な関係上、国外調査を行うことができなかったが、代わりに(2)の国内調査に重点的に携わった。そうした調査活動のなかでとりわけ重要であったのは、派遣前の隊員に対して行われる研修の参与観察である。文化人類学者がオーガナイザーならびに講師を務めていることもあり、研修では文化人類学の知見がきわめて豊富に提示されている。こうした研修を実際に参与観察できたことは、派遣を控えた隊員に文化人類学的知見がどのような形で伝えられているのかを詳細に把握することができたという点で、非常に有意義であった。以上に加えて、研究代表者と研究協力者はそれぞれ、帰国した元隊員や派遣前研修の講師などに対する聞き取り調査も行った。なお、(3)については、年度後半に研究代表者と研究協力者が2回ほどミーティングを行い、(1)と(2)の活動を通じてそれぞれの得た知見の共有に努めた。
|