本研究の最終年度である本年度に行う活動として当初予定していた活動は、大別して(1)国外調査、(2)国内調査、(3)調査で得た知見の集約と検討および研究成果の公開に関する活動、の三つであった。(1)については、本研究の初年度と次年度で当初の研究対象国であるカンボジア、ベトナム、ラオスでの調査を終えることができたため、調査で得た情報を比較検討し、より一般的なコンテクストの下に位置づけるべく、上記3カ国に近く、同じアジア大陸部に位置し、派遣されている青年海外協力隊員の人数も多いバングラデシュにおいて、研究代表者が隊員とその関係者を対象とした聞き取り調査を行った。(2)については、前年度に引き続き、研究代表者と研究協力者(大橋亜由美・放送大学非常勤講師)が分担して、帰国した元隊員を対象とした聞き取り調査を行った。また、研究代表者が、派遣前の隊員を対象とした研修の参与観察と、研修の講師に対する聞き取り調査を行った。以上の国内外での一連の調査によって、隊員の活動における文化人類学的知見(文化人類学の視点、方法論、考え方などに関する知識)の活用のあり方に関する実際的な情報を、当初の目標どおりに収集することができた。加えて、研修に関する調査を通じて、研修で文化人類学的知見が隊員にどのように教示されているかという点についても十分な情報を得ることができ、さらにその情報と、活動中の隊員を対象とした国外調査や元隊員を対象とした国内調査によって得た情報をつきあわせることで、研修で教示された文化人類学的知見が隊員の活動のなかでどのように活用されたか(あるいはされなかったか)という点についても把握することができた。(3)については、前年度と同じく、年度後半に研究代表者と研究協力者が、ミーティングやメールなどを介してそれぞれの収集した情報の共有をはかった。一方、研究成果の公開に関する活動としては、たとえば、研究代表者が11月5日にオーガナイズした国立民族学博物館機関研究プロジェクト「支援の人類学」国際シンポジウム「グローバル支援の時代におけるボランタリズム-東南アジアの現場から考える」での基調報告などがあり、それらの場を通じて本研究で得た知見の一部をおおやけにした。
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