ドイツ法制史学・国制史学研究史に関しては、前年度におけるオットー・ブルンナーの国制史学説史の、同時代のドイツおよびオーストリア歴史学史の中での位置に関する研究をまとめ、論文を作成し、発表した。特にゲルマン古代もしくは古代ギリシャから近世までの連続性とそれ以後の鋭い断絶を特徴とする彼の歴史把握の特殊性を明らかにした。また、従来の学説史研究の中でひとしなみに扱われる傾向のある「ゲルマン的連続性」の概念についても、プルンナーが影響を受けている戦間期のそれと、古典的なゲルマン法学のそれとを分けて考えるべきことが明らかになった。20世紀における古典学説批判に関するこれらの研究を承けて、次に古典的なドイツ法制史・国制史学の形成過程についての研究を本格化し、Gerog Waitzのシュレースヴィヒ・ホルシュタイン史に関する諸論稿およびGrundzuge der Politikの分析を行なった。後者の著作の特色を明らかにするために、同時代の他の歴史家による『政治学』の講義の検討の準備を始めたが、既存の研究が少ないために、未だに適切な比較対象を探している段階である。。また、3月にドイツに出張し、Mommenta Germaniae Historicaに所蔵されているWaitzの遺贈文書を時間の許す限り閲覧し、とくに初期の未発表と思われるドイツ国制史に関する講演原稿の解読を試みた。 日本法制史に関しては、前年度に収集した宮崎道三郎の「比較法制史」講義筆記ノートの分析を始め、その下敷きとなったと思われる欧文文献を中心に検討した。
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