研究課題/領域番号 |
21530003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西川 洋一 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00114596)
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キーワード | 法制史 / 国制史 / 中世国家 / ゲルマン的連続性 / 法実証主義 / 封建制 |
研究概要 |
ドイツ法制史学・国制史学に関しては、Gerog Waitzについての研究を継続した。特に、ドイツ国制史研究史における彼の最大の業績であるDeutsche Verfassungsgeschichte(DVg)の初版の叙述と、そこで論じられた重要論点に関して彼が発表した個別論文および数多くの書評の分析を行なった。その結果、DVg初版および初期の論文においては古ゲルマン時代についての叙述の基礎となった史料としてTacitusのゲルマーニアが多く用いられていたのに対して、DVg第二版においては、依然としてTacitusは重要な役割を果たしているものの、後代の史料からの逆推の比重が増大したことが明らかになった。この変化と当時のゲルマン古代学の展開との関係を明らかにするために、彼の数多くの書評等を検討したが、必ずしも彼に直接的影響を与えたと思われる著作を見いだすことができなかったので、ゲルマン古代学研究史の検討を開始した。 所有権法・訴訟法に関しては、19世期ドイツ法制史学の通説であったHeinrich Brunnerの諸著作のうち、とりわけ従来必ずしも詳しい研究が行なわれてこなかった彼の比較法的研究と一連の訴訟法史研究との関係について検討し、その初期中世訴訟法についてのイメージがイングランド法、フランス法に関する彼の研究と内的に関連しあっていることを確認した。 日本法制史については、宮崎道三郎の講義ノートにおける西洋文献の利用が(時代の制約のため仕方なかったとはいえ)必ずしも体系性を持っていたとは思えないことが明らかになった。それと関係するのが、国家や法についての自覚的な構想の欠如である。これに対して、中田薫においては、私法・公法の峻別に立脚した体系的な構成が早期的に完成する。これがドイツ、フランスのいかなる研究方向に最も強く影響を受けているかを明らかにすることが次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的な文献をもとにした個別論点にかかわる対象著者たちの叙述の分析は予定通り進んでいる。最終年度である24年度に、個別論点に関する叙述を関連づけて、日独比較の視座を明確にすることになる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究のとりまとめとして、Waitzにおける法と国家に関する観念の歴史的に位置づけて新学説(特にTh.Mayer)と比較し、H.Brunnerにおけるフランク国家の基本的な把握とその法観念、訴訟法についての見方の特色を明らかにした上で、宮崎道三郎、中田薫、その後の日本法制史学における国家と訴訟に関する見方と比較し、その特徴を明らかにするo
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