研究課題
今年度は主として、1990年代の司法試験改革の頃の議論を中心に、法曹人口を巡る議論において、弁護士が社会において果たすことが期待される役割という観点から、どのような議論がなされているかを中心に、資料収集するとともに検討してきた。当時の議論では、弁護士人口が大幅に増加すると、弁護士の業務環境が悪化するため、人権擁護活動をはじめとする公益活動が行えなくなるという議論が、展開されることがあった。今回、日弁連が2010年に実施した経済基盤調査のデータを分析する機会を得ることが出来た。また、以前より、日弁連が2000年に実施した経済基盤調査のデータや、2008年に日弁連後援で行われたMind & Skill調査データ、共同研究者として参加している62期弁護士調査データについても入手していたことから、これらのデータをもとに、弁護士になろうとした動機、弁護士業務としてのやりがい、弁護士の収入、業務内容の相関についても分析を行うなかで、上記のような議論が統計的に成り立つかどうかの検討を始めた。その結果、2010年データについては、若手で収益が高くない業務の割合が高いものの、やりがいは高い一群のあることが明らかになった。その一方で、62期調査データからは、収入とやりがいとの間に有意な相関も見られた。その結果、弁護士人口増による収入悪化が、弁護士による公益活動を妨げるとは、必ずしも言えないものの、収入減は、やりがい等の低下に繋がることが分かった。法曹人口をめぐる議論は、こうしたことも踏まえながら行う必要があることが明らかになった。
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青山法務研究論集
巻: 2 ページ: 67-171
行政書士ふくおか
巻: 184 ページ: 18-19