研究課題
本年度の研究においては昨年度に引き続き,「人権」と「主権」という2つの概念に注目した。これら2つは従来から,基本的人権の強制的な担保の担い手が,主に「主権国家」という法的人格であるという点において,深いかかわりをもってきた。さらに近年では,破綻国家をはじめとして,自らの人民の最低限の人権さえ保障できない国家,あるいは自国の人民の生命・身体という基本的な人権さえ侵害する国家が,次々と国際世論の批判を浴びている。グローバルなスケールでは恒常的に生じているこのような人権侵害を前に,それを目撃する他国は人権保護のために他国の主権にさえ介入すべきなのかという議論が,国際関係論や国際法の領域で近時盛んに行われている。このような背景のもと,本年度は,主権国家がもつ「人権保障」という機能と政治的主権の概念との複雑な規範的関係に着目するに至り,国家の人為的人格の本質を構成する民主的意思決定プロセスを国際社会の文脈の中でとらえ返すことの哲学的意義をさらに探究することができた。このような研究成果に関する国際的な反応を知ることを目的として,7月にはブラジルのベロリゾンチでの第26回IVR(法哲学・社会哲学国際学会連合)世界大会においてUnanimous Convention as the Requirement for Legitimate Democracyという題目の報告を行い,各国の研究者と学術的意見交換を果たし,自らの見識をいっそう深めることができた。本研究のこのような展開によって,国家という「人為的人格」における民主的意思決定過程の性質が,社会契約という伝統的な国内的概念によって分析されるだけでは足りず,国際法における自己決定権原則つまり内政不干渉の原則との関係において,その本質をとらえ直さなければならないことを明らかにしたと評価できる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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