本年度は、昨年度に引き続き、各地の自治体がインターネット上で公開している例規集を用いて、「住民参加促進型条例」の条文の収集を行い、ほぼ完了した。収集した条文の分析は、まだ探索的段階にとどまっているが、「住民参加促進型条例」の施行をとおして実現しようとしている民主主義のイメージと、これまでの様々な民主主義論が描き出してきた民主主義のイメージとの間には、微妙な齟齬があることが明らかになりつつある。 また、関西地区のいくつかの自治体を対象として、関係者への聞き取り調査を実施するとともに、全国のいくつかの自治体が公表している、その自治体ですでに施行されている「住民参加促進型条例」を対象とした調査報告書や評価報告書を入手し、その検討に着手した。これらの作業をとおして、「住民参加促進型条例」の存在やその条文が住民に十分に認知されておらず、それゆえに、「住民参加促進型条例」が想定していたほどには大きなインパクトを地域社会にもたらしてはいないという問題が、いくつかの自治体で共有されていることが明らかとなった。 さらに、それらの作業と並行して、「住民参加促進型条例」のインパクトを分析するという目的に適合的な理論枠組の検討を行った。本年度は、これまで法社会学において法のインパクトの分析のために利用されてきた理論枠組以外の理論枠組にも検討の対象を拡大したが、その過程で、地域社会の共有資産に関する理論である「コモンズ」論に着目し、「住民参加促進型条例」のインパクトを分析するに際してのその有効性を検討した。
|