2009年度は、北海道、青森県、宮城県、群馬県の4地域で資料調査を行った。 その結果、宮城県庁資料の訴願資料の中に注目すべき事件を発見した。同県のある村で、刑事事件犯行者の嫌疑をかけられ、逮捕された村議がおり、村会はこれを理由として当該村議を解職し、補欠選挙を行ったところ、同人は、不起訴となり、補欠選挙の無効を争って訴願に及んだという事件である。 この事件は、村のサンクションと訴願、ムラ-行政村-県の規範関係の流動性を示していて大変興味深い。 しかし、調査を1度しか行うことができず、とくに、県庁資料以外の資料調査は行えなかった。この残された課題については、来年度行いたい。 また、今ひとつ、注目すべき事件として、群馬県における足尾銅山鉱毒件の顛末にかかわる問題がある。これは、昨年度も調査をした群馬県の旧毛里田村で起こった小作争議の調査中発見したものであるが、このムラで小作争議の一方の中心となった人物の子供は、戦後鉱毒事件で激しい闘争を展開することとなる。 足尾銅山鉱毒事件は、有名な事件で資料集等でているが、そこで注目されているのは、明治期の主に栃木県を中心とした動きである。しかし、鉱毒事件の周辺地域である栃木県と「対岸」である群馬県では、この事件につきかなり異なった動きが見られる。 今年度は、この事件の刊行資料収集にかなり予算を使った。とりわけ、明治以来のこの事件が戦前は栃木県側、戦後は群馬県側と中心が移っていく様相、戦前とは異なる被害者運動の態様等、本研究テーマに密接する重大な事実が判明した。
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