研究概要 |
2年目である本年度は、グローバル化における私法の変容の実態を研究し、国際法・民法、抵触法の各分野に対して、それらの変容がどのような理論的影響を与えているかについて、とりわけ法多元主義に注目しながら、文献の精読、学会・研究会への参加を通じて考察した。 国際学会としては、2010年7月25日から30日まで、ワシントンD.Cで開催された第18回国際比較法学会に、研究代表者・分担者が共に参加し、各国の私法の特徴的な在り方や、法移植や法の社会的受容の実態についての報告をきいた。特に7月28日に午前・午後と通して行われた「私法理論ワークショップ」においては、浅野は"Pluralism and Private Law"、横溝は"Whatis 'Law'in Conflict of Laws?"と題して、それぞれ私法理論と抵触法理論の観点からの報告を行った。ここでは、ヨーロッパ諸国、アメリカなどから広く参加した私法理論の研究者や弁護士などの実務家の意見をきくことができ、議論を交換することができた。また、この学会中に、Duke大学のRalf Michaels教授にインタビューする機会を得た。Michaels教授は、比較法、抵触法、法制史などの広い観点から私法理論の在り方、私法と公法について近年精力的に研究を展開しており、本研究において最も注目している研究者の一人であるが、二時間ほどのインタビューで、グローバル化における私法の変容に大きく関わる理論としての法多元主義に関する教授の見解について質問し、討論することができた。 国内での活動としては、1年目に引き続き「抵触法と法哲学(IPRP)研究会」を三回開催し(2010年7月9日、11月26日、2011年3月18日)、それぞれMichaels教授へのインタビュー内容の検討、W.TwiningとB.Tamanahaの法多元主義に関する論文についての議論、Calliess & Zumbansen, Rough Consensus and Running Codeについての議論を行った。論文その他の成果としても、論文計4本、報告計4本の成果をあげた。
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