本研究の二年目にあたる今年度の課題は、(1)新しい「分権循環型エネルギー法政策」を具体化し、(2)エネルギー法政策を転換するためめプロセスを検討することであった。実際に行ったことは以下の通りである。第1に、ドイツの再生可能エネルギー政策を日本の新しい「分権循環型エネルギー法政策」の手がかりと考え、前者について文献研究を昨年度行ったが、今年度はそれを踏まえ、海外調査を行った。具体的には、トリア大学環境・技術法研究所、ビュルツブルク大学でヒアリング(ヘンドラー教授)、資料収集を行った。これにより、ドイツでは原子力政策に再転換せず再生可能エネルギー政策を進展させる予定であること、限界に近いであろうと思われたドイツの風力発電について技術革新によって発電量のさらなる拡大は可能であると考えられていること等が明らかになった。第2に、本研究の三つの視点((1)循環、(2)環境、(3)分権)のうち、(3)分権に関しては、三つの研究会(行政法研究フォーラム、公法学会、東アジア行政法学会)への参加を通じ、地域ごとのエネルギー政策をすすめる場合にもどのように住民の意見を反映させるかといった問題や自治体が事業主体となる場合に採算性と公共性をいかに確保するかといった問題を検討する必要があることが明らかになった。研究成果「鞆の浦埋立免許差止め事件第一審判決」は前者の問題に関する研究の一部であり、研究成果「(地方開発事業団に関する)地方自治法298条~319条の解説」(発表予定)は後者の問題に関する研究の一部である。第3に、以上の研究に基づいて中間的な構想をまとめ、関西行政法研究会では、経済効率と環境効率という観点から構想の一部を報告した。
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