今年度は、本テーマによる研究計画の最終年度でした。まずは、残っている現代民主制下での「統治」作用の実施とそれへのコントロールなどに関する文献の入手をし、さらに今年度はとくに和書の新刊文献購入に主力が注がれました。謝金はこれらの文献の整理や資料複写に当てられました。 この一年は定年退職後特命教授に任じられ、研究室の使用並びに所蔵文献の使用を引き続き認められるなど所属機関より配慮を頂きました。 従来の憲法学が、現代民主制下での新しい統治組織論を展開できないできたこと、すなわち、「行政」を一方では「法律執行」に重ね合わせ、「法の支配」論的要請が強調され、他方においては、「行政」の機動的・弾力的な政策立案・実施が必ずしも「法律執行」には納まりきれないということが、いわば同時的に語られてきていて、この両者の整合的構成が図られてこなかったのです。 本研究は、かかる問題に対して、説得力ある理論的解明をすることに向けられてきました。具体的には、一方では権力分立論及び他方では議院内閣制の歴史性を認めつつも、それらの議論を歴史性故に排除するということなく、それらを整合的に構成することを目的としています。そこでは、何よりもまず純粋法学による批判をクリアしたうえで、取り組むことが必要であるとの認識が重要でありました。そしてその上で、目下とくにモンテスキューとバジョットとの関連を調和的に理解できるとの認識に達しています。 この後者は法律案の作成・実施などの「統治」の実現には大統領制よりも議院内閣制のほうが勝っているということを説くもので、前者は市民の政治的自由を確保するためには「立法」と「法律執行」の二権は集中しないことが望ましいと説くもので相矛盾しないのです。
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