人権保障害施過程上の「社会的なもの」の意義に関する理論的かつ実証的研究として、昨年度は日本における法律家及び民間団体の役割の調査及び研究を行ったが、本年度はフランスにおける法律家及び民間団体の調査及び研究を行った。両者の比較において特に顕著となったのは以下である。日本においては社会的排除の対象となっている人々の権利保障とりわけ公的扶助等の社会権保障に対して保護実施機関が極めて消極的あるいは拒否的態度をとり、排除を一層強めているため、(1)法律家・民間団体が生活保護の申請支援など権利保障手続に取り組む必要が特に必要とされていること、(2)そのため当然ながら行政と法律家・民間団体との連携が困難であり、行政の民間団体への支援もほとんどないことである。他方、フランスにおいては、貧困者に対する公的扶助等の社会権保障制度についてみれば、在留資格のない外国人以外については、保護実施機関が拒否的姿勢をとることは少なく、また権利保障過程において、行政が法律家・民間団体に対して財政面でも支援し、両者が連携している状況にあった。しかし、憲法上の権利としての社会権については、両者ともその法的権利性、司法的救済機能が低く見積もられているという共通点があった。社会権の司法的救済において「社会的なもの」が果たす役割は両者において大きいといえよう。
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