環境国家の法構造を法治国家の視角から解明することを目的とする本研究において、本年度は、法治国家の基本構造に焦点を当て、その諸局面を複数取り上げて考察することとなった。 2010年9月5日に早稲田大学で開催されたシンポジウム「憲法・不法行為法・環境法の断面」において報告者として登壇し、「基本権保護義務と不法行為法制度」というタイトルの下、法治国家原則の一局面である基本権保護義務を論じた。 2010年11月13日に明治大学で開催された国際人権法学会では、「憲法上の権利と国際人権」というテーマで、グローバル社会における基本権の役割を論じ、法治国家とグローバリズムの関係を分析した。 年度末(3月24日)にベルリン自由大学との共同研究の成果として「法治国家の課題と将来」と題する日独シンポジウムを開催する予定であったが、東日本大震災の影響で急遽延期になった。しかし準備は万端であった。あとは開催を待つばかりだっただけに、それが延びたことは極めて残念だった。 本年度同様、今後も基本権論を一つの軸とし、日独比較研究の手法を用いて、研究を進めていくつもりである。とりわけ昨年度に5ヶ月滞在し、今年度も2週間ほどお世話になったベルリン自由大学法学部の公法スタッフ(特にフィリップ・クーニッヒ教授)との共同研究を意識し、それとの接合可能性を探りつつ、本研究を遂行する。
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