研究課題/領域番号 |
21530030
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
棟居 快行 大阪大学, 高等司法研究科, 教授 (00114679)
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キーワード | 人権救済 / 障がい者差別 / 私的自治 / 憲法裁判所 / 私人間の憲法訴訟 / 憲法と行政法 / 人権救済機関 / 憲法解釈 |
研究概要 |
平成23年度の研究は、研究目的とした国際人権規約等の人権条約の人権救済機関における判断規準化という観点から、平成22年度から継続で続けている内閣府障がい者制度改革推進本部差別禁止部会での議論と平行して、条約の国内実施のさまざまの困難な問題を、サービス、司法、教育などの社会生活上の多面的な観点から整理した。また、ドイツケルン大学での「私的自治と人権保障との関係」を中心とした資料収集ならびに2011年度ドイツ国法学者大会参加を通じて、人権保障自体が主権国家が国際社会の複雑なネットワークに絡めとられるなかで多面的性質を帯び、ドイツですら単純に憲法裁判所の機能強化では解決できないと認識されていることを知った。その研究成果は、原理的な観点からのものとして、「憲法と行政法」の関係に関する試論、さらに技術的観点からのものとして、「私人間の憲法訴訟」の多面的考察に一応の実を結んだ。後者は、私的自治原則の検討から入り、私法そのものの法としての特徴が、私人間における人権救済の裁判において特有の影響を与えていることを強調するもので、これまでの私人間効力論という憲法上の重要論点に新たな視角を導入する試みである。さらに、憲法解釈を個別事件の特性に合わせて行う具体的作業を所属大学紀要に継続的に公表したほか、憲法解釈のもう一つの可能性がありえたのではないかという観点から、これまでの業績をまとめなおし、単著を公表した。人権救済の簡易化という課題にとり重要であるのは、事案ごとに解決可能な論点を発見し、逆にその論点の角度から紛争を再構成することであり、むやみに一般的な法理論を導入することではない、というのが、予想どおりの中間的な結論であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私的自治と人権救済の関係については、一応の結論に至り成果を公表することができた。また、人権救済機関が創設される場合の判断規準として国際人権条約を用いるという点においても、障害者権利条約を素材とした検討作業は順調にすすんでいる。しかし、国の人権救済機関についての法制化の動向が不透明であることから、国際人権規約の国内規準化の個別的検討には、前提の理論的作業をドイツ調査で行っているあたりで、やや足踏みしているといわざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため、立法の動向とは関係なく、人権条約を国内実施するための具体的な解釈論を提示することを進める。すでに昨年度、国際人権条約を国内法の世界に「客観法」として取り込むことを提唱したが、それを人権条約の個別条文に即して具体的に進めることとしたい。あわせて、障がい者権利条約の妨げとなっている国内法上の諸問題を、本研究の観点から、憲法解釈としても処理しうるのではないかという仮説のもとに批判的に検討し整理する。
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