4か年にわたる本研究の最終年度にあたり、簡易迅速な人権救済機関の制度化ならびに運用のあり方につき、障害者差別禁止施策に力点を置き、具体的にどのような差別禁止法制が実効性があり、また、どのような救済手続きが障害者をとりまく社会環境を激変することなく簡易迅速な救済手続きたりうるか、という点の検討をすすめた。その成果は、内閣府障害者政策委員会の下に置かれた「差別禁止部会」部会長としての研究代表者の活動にそのまま反映され、同部会として調停やあっせんを中心とする障害者の救済手続きを立法的に実現すべきである、という「意見」をまとめる際の、部会長としての研究代表者の積極的な働きかけにつながった。また、差別禁止法制の我が国への導入に際して問題となりうる諸点を検討した、「障害者権利条約の国内実施をめぐって」坂元茂樹・薬師寺公夫編・普遍的国際社会への法の挑戦(2013年3月、信山社)211-226頁などに、障害者権利条約を批准し国内実施する場合に制定が求められる差別禁止法制につき、日本国憲法と差別禁止法制との考えうる軋轢とその調整の考え方をまとめ、簡易迅速な救済のための実体権のあり様につき私見を展開した。
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