本研究の目的は、中国行政法(学)の生成と発展の過程における日本法の受容を明らかにしようとするものである。具体的には、(1)清朝末期の行政法(学)と日本法の受容、(2)民国時代の行政法(学)と日本法の受容、(3)現代中国の行政法(学)と日本法の受容とに分けて、日本法が一体いつどのように如何なる影響を中国行政法(学)のどの部分に与えていた(る)のかという理論分析を行う。 平成23年度においては、次の二つの側面から、本研究に取り込んでいた。 第一に、前年度に引き続き、資料解読と理論分析を行った。 第二に、研究成果を段階毎に整理することである。ただし、自分の予想以上に文献が多く時間がかかるので、この作業は今でも続いている状態である。 上記の研究活動の結果、次のような段階的な成果を得ることができた。 (1)近代的意味での行政法(学)の草創期に当たる中国最後の封建王朝である清の時代において、日本と中国との間で史上初の行政法(学)の「移植」が行われたことが判明できた。 (2)中華民国の時代に入り、日中両国の間で行政法の分野においくて第2回目の「移植」と「継受」があった。 (3)予想外の発見(予想不足というべきかも知れない)として、当初この研究を主に両国における行政法学という「学問」対「学問」の交流に注目していたが、文献収集や解読を通して、両国の間では「学問」の交流は勿論積極的に行われていたが、同時に(あるいはそれ以上に)、「人間」対「人間」の交流がより盛んに行われたことが判明した。このことは、中国から日本への大量留学(公費留学生と私費留学生)と日本から中国への専門家派遣(政府又は民間)という史実によりはっきりと裏付けられている。
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