研究課題
本研究は、多様な手法を駆使して行われる現代行政の特質に適合し、かつ、国民の包括的で実効的な権利保護を保障するような、新たな行政訴訟体系を構築することを目的とするものである。具体的には、(1)現行行政事件訴訟法の枠内で上記目的にかなう解釈論を探求すること(解釈論的検討)、(2)上記目的にとって望ましい行政訴訟体系を立法論的に構想すること(立法論的検討)、(3)以上の研究への示唆を得るために、諸外国における行政訴訟制度の実情を検討すること(比較法的検討)を内容とする。平成23年度は、まず、ドイツでの在外研究中にお世話になったW=R・シェンケ先生(マンハイム大学名誉教授)の古稀記念論文集"Staat, Verwaltung und Rechtsschutz"(「国家、行政および権利保護」)に、"Der effective Rechtsschutz im japanischen Verwaltungsprozessrecht"(「日本行政訴訟法における実効的権利保護」)と題する論文を寄稿した。この論文は、日本における2004年の行政訴訟改革について、その意義と今後の課題を論じたものであり、本研究に関する現時点での総括となっている。その他、現代的な行政領域のうち、情報公開および個人情報について、学会報告を行い、その内容を公表した。まず、昨年国会に提出された情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)の改正案について、第8回行政法研究フォーラムにおいて報告を行い、これを公表した。また、第11回日仏法学共同研究集会において、"La protectiondes donnees personnelles end roit public japonais"(「日本公法における個人情報の保護」)と題する報告を行い、その日本語訳を公表した。フランス語版も近日中に"Revue Internationale de Droit Compare"(比較法国際雑誌)に公表される予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究課題のうち、上記の解釈論的検討については、おおむね研究は順調に進展している。これに対し、立法論的検討および比較法的検討については、なお行うべき作業が残っている。
上記のように、解釈論的検討についてはかなりの研究の進展が見られたので、本年度はその成果の公表に努めたい。また、立法論的検討および比較法的検討については、最終年度である本年度において検討を進め、できるだけ早期にその結果を公表したいと考えている。問題点としては、法科大学院等における授業等の負担があるが、何とか研究時間を捻出して成果を出せるよう努力したい。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
ICCLP Publications
巻: 12号 ページ: 43-64
法律時報
巻: 84-1 ページ: 72-76
条解行政情報関連三法(高橋滋他編)(弘文堂)
ページ: 491-500
Staat, Verwaltung und Rechtsschutz, Festschrift fur Wolf-Rudiger Schenke zum 70. Geburtstag(P.Baumeister et al.(ed.))(Duncker & Humblot)
ページ: 1027-1043
http://www.law.kyushu-u.ac.jp/~ohashisemi/professor_m.html