平成25年度の研究も、比較的順調に行うことができた。客観法規範適合性審査の手法については、平成24年度に政教分離規定を例として、国家と宗教の「かかわり合い」の審査と、その正当化審査という2段階の審査を提唱した。この論考は、平成25年度の学界回顧などで大きく紹介されるなどの反響があった。この研究を受けて、平成25年度には、信教の自由と政教分離原則が「緊張関係」に立つ場面における調整の手法について考察した。この論文は、ドイツ憲法判例研究会編『憲法の規範力と憲法裁判』に収められている。 客観法規範適合性審査については、平等原則の審査手法について二つの判例を素材とした研究を行った。尊属殺重罰規定違憲判決と、婚外子法定相続分差別違憲決定に関する判例評釈である。平等の領域における代表的判決を素材としながら、別異取り扱いとその正当化という2段階審査について考察したものである。 憲法上の権利は、行政裁量審査のなかで役割を果たす場合も少なくない。高橋和之先生古稀記念論集に寄稿した論考では、いまだ学界における研究が始まったばかりのこの問題について、判例を素材に比較的詳細に考察した。従来憲法判例として扱われてきた判決の少なくないものが、行政裁量審査の枠組みで判断されている。そのため、この研究の実務上の意味は大きく、今後参照されるものとなったのではないか、と考えている。 このほかに、これまでの研究の成果を活用して、法科大学院生向けの論考5編を、『事例研究 憲法[第2版]』で公表している。さらに、『憲法I』と題する憲法上の権利に関する共著による体系書の執筆も、最終段階に至っている。
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