研究概要 |
本年度の研究目的および研究実施計画に従い、フランス、メキシコ、トルコの3カ国における国家の非宗教性に関する研究者と連絡を取りあうなどして関係する憲法原則を現地出張により調査した。そうして得られた資料・情報をもとにして、その関係する現行憲法規定、その歴史的背景、関連する法律規定およびその適用を多面的に分析した。これにより、非宗教性は各国における重要な憲法原則であり、しかもその原則が各国で共通する要素を持つとともに、各国の歴史的状況などを反映してその目的、その重点、関連する諸原則との関係等において差異が見られた。 また、わが国における政教分離原則をも考慮して、各国における非宗教性に関する原則を有効に比較するための枠組みおよび同原則に含まれる各国に共通した内容を検証した。その結果、ジョン・ロックの考えも参照して、国家と宗教との組織的切り離し、宗教事項に対する国家による不関与、国家事項に対する宗教による関与の不関与の3つの要素から国家の非宗教性に関する比較の指標とするのが妥当だという結論を得た。 さらに、研究実施計画にあるように、平成22年度に甲南大学内で宗教法学会を開催し、その際に学会参加研究者と本研究に関して意見交換した。加えてメキシコにおいて開かれた国際憲法学会においても、本研究に関する研究成果の要点を研究報告する機会もあった。そのうえで、この研究報告の原稿を海外の研究協力者にも見ていただいた。これらの機会において,本研究の研究方法、比較法研究の枠組みおよび研究成果がきわめて興味深いものであるとの評価を受けた。
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