本研究は、3年の研究期間内において日米の退去強制法の歴史、現行制度、救済手続、関係施設、および制度全体の実際的な運用について調査・分析し、将来の出入国管理政策への示唆を見出すことを目的とするものであった。 本研究の目的を達成するため、(1)日米における関係資料の調査・整理、(2)日米におけるこれまでの文献(著書・論文)の整理、(3)アメリカにおける現地調査(カリフォルニア州ロサンジェルス市、サンディエゴ市、サンフランシスコ市、イリノイ州シカゴ市)、(4)日本における現地調査(東日本入国管理センター、大阪入国管理局、大村入国管理センター)、(5)日米比較の意見交換・分析(モトムラ・ヒロシ教授〔UCLAロースクール〕、スティーブン・J・ドイ氏〔移民法弁護士〕、スティーブ・レゴムスキー教授〔ワシントン大学セントルイス〕他)、(6)日本における研究者および実務家との意見交換・研究会(公法学会、国際人権法学会、外国人法研究会会員他)での発表等を通じて以下のような研究の成果を得ることができた。 具体的な内容としては、アメリカにおける退去強制制度について、(1)建国以来の退去強制法の史的展開、(2)1952年移民・国籍法の成立と現行制度の展開、(3)現行退去強制制度の概説、(4)退去強制からの救済手続、(5)現行制度の運用と問題点等について調査・分析し、(6)個人の権利保障と国家権限の適正な行使を旨とする憲法学の視点からわが国の退去強制制度との比較研究をおこなうことができた。また、これらの考察に基づいて、わが国における出入国管理および外国人の人権保障についての問題提起を単著のかたちで公に刊行することができ、学界および外国人法政策全般へのいくばくかの貢献ができたのではないかと考えている。また、このたびの研究において意見交換をおこなった海外の研究者たちと今後も共同研究をおこなっていくことを約束し、それぞれの国における比較法研究に寄与していけるものと考えている。
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