障害者の権利条約の実施過程が国際的にも、国内的にも本格化した本年度は今回の研究の最終年度であり、「研究の目的」と「研究実施計画」に従って、研究のひとまずの仕上げに取り組んだ。具体的な内容は以下のとおりである。 (1)障害者の権利条約の国際的モニタリング過程の分析 今年度は4月の障害者の権利委員会第5回会期(4月11日-15日:ジュネーブ)においてチュニジア、9月の第6回会期(9月19日-23日)においてスペイン、それぞれとの建設的対話・審査が実施された。また、9月には第4回締約国会議も開催された(9月7日-9日:ニューヨーク)。このうち、権利委員会第5回会期と第4回締約国会議は本研究の一環として傍聴する機会に恵まれ、現場で障害者の権利委員会専門家や、締約国会議に出席している各国政府代表や障害NGO代表と意見交換をすることができた。条約の批准数は年度末で111に達し、障害者の権利条約の実施過程はついに本格的に開始された。その成果である、スペインとチュニジアに対して出された総括所見の分析に取り組み論文としてまとめた。 (2)日本の障害者制度改革の分析 障害者権利条約の国内実施を進めるために、日本では障害者制度改革が2009年末から開始されている。この制度改革のために発足した内閣府の障がい者制度改革推進本部のもとに設置された障がい者制度改革推進会議の意見を一定程度、反映する形で2011年7月に障害者基本法は改正され、8月に一部を除いて施行された。この改正では、障害者の権利条約に則った形で新設された条文が盛り込まれている。さらに、制度改革の方針を定めた閣議決定(2010年6月)に基づいて、障害者総合福祉法と障害差別禁止法制定の取り組みがなされている。その際に、前述のスペインとチュニジアの総括所見が示している、障害者の権利条約の方向性を、日本の制度改革の参考にするために提供した。_
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