研究概要 |
本年度は「承認」という観点からEU法及び諸国の国際私法における新たな動向を調査検討した。EU法について、欧州司法裁判所のCase C-353/06, Grunkin and Paulに調査を行った。 さらに、欧州人権裁判所の2007年6月27日のWagner v.Luxembourg事件判決の検討を行った。本来ならばルクセンブルクでは承認されないはずのペルーの養子決定が,欧州人権条約の保護する,家族生活の尊重を受ける権利という観点から、承認しないと欧州人権条約違反になるとして承認が求められたものである。この判決に関連して、人権と国際私法の相互作用に関する文献を調査・検討した。人権からの国際私法規定に関する審査は当然あり得、その審査は個別具体的に通常はなされる可能性がある。 以上においては、本年度は調査を進めたものの、まだ論文の形では公表していないが、平成22年度に公表する予定である。 なお、以上の研究の副産物として、仲裁合意を支援するために英国裁判所が訴訟差止命令(anti suit injunction)を発令することが、裁判管轄及び判決の承認に関するEUのブリュッセルI規則に違反するとした、欧州司法裁判所のWest Tankers事件についての判例研究を行い、公表した。
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