研究概要 |
本年度は引き続き,「承認」という観点からEU法及び諸国の国際私法における新たな動向の調査を行った。EU法については,欧州司法裁判所の先決裁定(Case C-353/06, Grunkin and Paul)について,その後の学説の評価を調査した。 なお,EU法に関連して,構成国の国内管轄事項である構成国国籍の得喪,具体的には帰化取消しについて,EU市民権の観点からEU法による制約があり得るとした,欧州司法裁判所のRottmann事件先決裁定(Case C-135/08)について検討を行い,論文として公表した。 「承認」論と国際私法に関連しては,引き続き,欧州人権裁判所の2007年6月27日のWagner v.Luxembourg事件判決の調査を行った。このほか,公正な裁判を受ける権利(欧州人権条約6条)から,条約なしには外国判決を承認しない従来の法制度を,それでは6条違反になるとして外国判決を条約なしに承認するべきであるとする,ロシアの裁判例があることが判明し,引き続き検討を行っている。 このほかに,副次的成果として,外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律の制定に伴い,主権免除をめぐる国際私法上の問題について再検討を行い,学会報告を行った。
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