研究概要 |
研究の最終年度であり,引き続き「承認」という観点からEU法及び諸国の国際私法における新たな動向を調査検討するとともに、研究のとりまとめを行った。 基本的人権の国際私法への影響については,欧州人権裁判所の2007年のWagner対Luxembourg事件判決を中心として,外国で成立した家族法上の地位が,法廷地国際私法により成立を認められないことが,家族生活の尊重を受ける権利などの人権に照らして,問題とされる,したがって法廷地の国際私法にもかかわらず,「承認」が求められ、るという現象を,国際私法の観点からどのように評価するのかという検討を行い,2011年11月に関西学院大学で開催された国際法学会大会において報告した。この報告内容は,論文として公表する作業を現在進めており2012年後半に公表の予定である。このほかに,基本的人権の国際私法への影響に関しては,公正な裁判を受ける権利(欧州人権条約6条1項)のような手続的権利に関しても研究を進めた。 このような研究を進めるにあたり,関連していくつかの副次的な成果が得られた。まず,EU国際私法の研究との関連では,EUにおけるブリュッセルI規則の消費者契約について国際裁判管轄の特則が,インターネットを通じた取引の場合にどのように解釈されるのかについての判断を示した欧州司法裁判所の2010年の先決裁定の検討を行った。 また,法の適用に関する通則法の解釈論として,権利能力,失踪宣告,契約に関する規定の注釈を公表することで,判例学説の整理を行った。
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