国連行政は今日までいかなる変遷をたどってきたか。国連内部行政の全ての動きを「人」に着目して検討することを本研究のねらいとした。そのために、これまでなされてきた国連の人事行政・人的資源管理における大きな改革の流れを把握しつつ、その過程で改革の手当としてなされた職員に対する身分保障制度がいかなるものであったかも含めて、国連人事行政を包括的に検討することを課題とした。 本研究期間中は、特に職員の身分保障と事務総長の権限に着目し研究を行った。職員の身分保障に関しては、新制度の在り方や具体的な機能について考察することを主眼とした。ここでは、Official Document System(ODS)、UNBISnetのような国連関係データベースでの資料収集、外務省職員や国際法・国連研究者との意見交換を行った。これに加え、国連事務局の人事行政に関して、近年の人的資源管理(Human Resource Management)改革についても研究を行った。本研究については、浅田正彦編『国際法』(有斐閣、2011年)の第7章「国際機構」を分担執筆することにより成果を発表した。 事務局の変遷を探るためには、その行政の長たる事務総長の権限について研究する必要がある。そこで、事務局の機能やとりわけ事務総長権限がいかに変容を遂げてきたかを国連憲章の起草過程から今日に至るまで掘り下げて研究した。この成果としては、すでに世界法学会2010年度研究大会において、「国連事務局の機能変化」と題して研究報告を行っており、この報告をもとに論文「国連事務局の機能変化」『世界法年報』30号(2011年)を発表した。
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