平成22年度の研究目標は、「史料の補充及び本格的分析」であり、その具体的な研究実施計画として以下の四つを取り上げたので、この実績を報告する。一、「収集された史料に対する緻密な分析」:中国のマーチンの『万国公法』(1864)や傳蘭雅の著作等、日本の西周助『官版萬国公法』(1868)など、そして20世紀初期中国と韓国で出版された諸著作を比較しならが緻密に分析を続けている。二、「前年度(平成21年度)に収集できなかった史料の収集」:去年中国国家図書館(北京)で終わらなかった史料の収集を引続き行うと同時に、上海図書館でも史料収集を行った。特に、後者でもとても貴重な史料が多数発見され、今年も引続き収集を行う予定である。三、「台湾/香港史料の収集及び分析」:台湾では、雷菘生『国際法原理』(1953)、陳世材『国際法学』(1954)、崔書琴『国際法』(1954)など国民党が台湾に移動した後から出版された約80冊の教科書を購入又はコピーし、現在分析を行っている。香港では、香港学者による著作はなく、中国と台湾の教科書が使われていることを確認した。四、「韓国独立後の著作(1950年代)の分析」:朴観淑『国際法要論』(1949)等を分析しているが、『現代国際法研究』(1988)や『国際法学』(1992)など北朝鮮の教科書を手に入れたので、これらもあわせて分析と行っている。今年までの研究で、「東アジアにおける国際法用語の形成と定着に対する日本の貢献」の全体像とルートがほとんど確実な形で明らかになった。残る作業は、まだ収集が終わっていない一部の史料に対する継続的収集と、各国の史料間のつながりをもっと明らかにする為のより緻密な分析である。最後に、平成22年度の実績として以下の二つを追加しておきたい。一つは、去年シンガポール国立大学(NUS)で行った報告をまとめて提出し、現在インターネットで掲載されている(英語)。もう一つは、韓国の外交通商部(国際法規課)で「中国と日本における国際法の受容と研究動向」というタイトルで報告を行った(韓国語)。
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