2010年9月には、世界人権問題研究センターの研究会において「欧州逮捕状と双罰性(double criminality)の原則」と題して研究報告を行った。従来の国際法上の犯罪人引渡条約では、双罰主義が原則として踏襲されてきたが、最近の欧州諸国間の欧州逮捕状枠組み決定では、テロ犯罪を中心とする32の犯罪類型については双罰主義を脱却する措置がとられている。しかし、双罰主義は罪刑法定主義の要請に基づくものであり、人権原則からもその遵守の必要性が指摘されている。このような考慮の下に、各国における欧州逮捕状制度の実際の運用においては、双罰主義への回帰の傾向も見られる。こうした傾向について分析を行い、報告を行った。本報告の内容については、近々に論文としてまとめる予定である。 2011年の2月、3月には、中央大学図書館に所蔵していない犯罪人引渡法関係の古典的な図書について国内大学図書館の相互貸借制度を利用して、文献の調査を行った。さらに2011年3月下旬には、英国ロンドン大学高等法学研究所(IALS)において文献・資料の調査を行ってきた。短い滞在期間ではあったが、日本国内では利用できないデータベースも利用して多くの文献、判例等の基調な資料を多く収集することができた。以上により、本研究課題に関する主要な文献を多数収集できたと考える。今後は、これらの文献、資料を精査して、論文等にまとめて公表する作業が控えている
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