海外研究としては、次の成果をみた。ユトレヒト大学に出張し、同大学付属のオランダ海洋法研究所を基点として、国際法・海洋法研究者と意見交換を行った。オランダの海洋法政策のみならず、外国からの研究者とも意見交換することにより、他の欧州諸国、アジア諸国、米国の海洋法政策も議論することができた。さらに、ハーグで開催された海洋法の歴史的権威であるフーゴ・グロテティウスの生誕100年記念国際シンポジウムに出席した。その機会にも、オランダ人研究者のみならず、シンポジウム出席の諸外国研究者と意見交換の機会をえた。これらの意見交換においては、日本の調査捕鯨と、それに対する妨害行為の国際法上の評価、日本と近隣諸国との間における海洋境界画定紛争の解決の可能性、200カイリをこえる大陸棚の延伸問題などについて、諸外国の視点から、それぞれの国の経験に照らした意見を聴取することができた。また、日本が沖ノ鳥島を国際法上の「島」と主張し、その周囲に管轄水域および海底を設定していることについても、諸外国からの評価をきくことができた。これらの意見交換も念頭において、成果物としては、英文にて、調査捕鯨に対する妨害行為に関する日本政府の対応についての分析を発表した。また、大陸棚の延伸問題および沖ノ鳥島についても、和文にて小論を発表した。共同編著者となった教科書では、海洋法に関する二つの章を含めて執筆した。口頭報告や講演としては、アジア学術会議において、シンガポール・マラッカ海峡の利用国としての日本の立場から、海峡沿岸国と利用国との協力のあり方につきコメンテーターとして発表し、日米加国際シンポジウムでは、北極海航行についての日本の立場を踏まえた報告をした。また、国連国際海事機関研究所では、4回目になるが、調査捕鯨に対する妨害行為の問題も取り上げて、海洋法の講義を行った。
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