研究課題
平成21年度は、主として国際的な民事賠償メカニズムに関する比較分析を行い、個人請求の処理プロセスについて、各々の手続的特徴と問題点を検討した。具体的には、(1)請求の法的基盤にある個人請求権の位置づけ、(2)個人による直接的な請求提起と関係国家による一括提起のあり方、(3)大量かつ同時期の請求に対応するための処理システムのあり方、(4)補償金の配分方法といった点に関して、イラク・クウェート「国連補償委員会」(UNCC)、ボスニア・ヘルツェゴビナ「避難民および難民の不動産請求権に関する委員会」、コソボ「家屋および財産に関する請求権委員会」、「エリトリア・エチオピア請求権委員会」(EECC)、「イラク財産請求権委員会」、「スーダン・ダルフール補償委員会」の規程(設立文書)や手続規則の分析を行うとともに、それに至った審議過程について検討・分析を行った。この研究の一部については、平成21年9月にドイツ・フランクフルト大学で開催された国際法協会(International Law Association)・「武力紛争犠牲者の賠償に関する委員会」において、Draft Model Statute of an Ad Hoc Compensation Commissionの問題に関連して報告を行い、これに基づいてヨーロッパ各国の研究者と意見交換も行った。また、この機会に「エリトリア・エチオピア請求権委員会」の裁判長であるHans van Houtte教授(ルーバン・カトリック大学)にインタビューを行い、同委員会の活動の手続的な課題について意見の聴取を行った。これらの研究活動の成果の一部は、雑誌論文の欄に記載された二つの英文論文として結実しており、それは世界的にも分析が進んでいない平和構築過程における国際刑事裁判と民事賠償に関する国際手続の関係性に関する重要な研究と評価されている。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
Public Interest Rules of Internationa I Law : Towards Effective Implementation(Teruo Komori and Karel Wellens eds.)
ページ: 293-312
International Law Association, Report of the Seventy-Third Conference Held in Rio De Janeiro
ページ: 500-518