研究概要 |
まず、世界の海洋で自国沿岸水域を超えて公海に及ぶ海洋保護区(Marine Protected Areas)設定の可否の問題等を検討し、環境保護重視の動向と、伝統的な公海自由との関係を考察した結果、必ずしもこれら二つの動きは矛盾せず、前者の傾向が後者に悪影響がある訳ではない旨の下欄の論文(英文単者)を執筆した。また、こうした沿岸国の管轄権の拡張傾向に対して、公海自由を重視し自国艦船の機動力の確保を意図する米国のような海軍国の立場に関し、英文書評('Mari time Power and the Law of the Sea:Expeditionary Operations in World Politics,by James Kraska. Oxford,New York:OUP,2011.')を執筆し、その関連からも多くの示唆を得た、ロンドン大学高等法律研究所図書館で文献調査・資料収集を行い、同大学研究者や弁護士らとも最近の海洋法事例につき懇談・意見交換をし、これらの成果の一部を上記の論文にも反映させた。 昨年より外務省安全保障政策課における南シナ海研究会で、国際法学者以外に軍事専門家、海外外交官らと南シナ海における中国とASEAN諸国との間の島の領有権問題等について議論をし、新年度に別途、海外で学術報告する機会を得た。また、北極海における海洋法上の問題につき海外での学術報告を、また大陸棚の外縁に関する問題についても学術講演を行うことがそれぞれ決まっている。 以上、公海の持つ意味について最近の動向を吟味しつつ、国連海洋法条約(UNCLOS)につきつけられた新たな動向を掘り下げ、海洋基本法を有する日本の今後の対応を再検討した。なお、外務省国際法局海洋室の海洋政策研究会の委員として「公海における海洋保護区の設定と海洋遺伝資源」と題する研究報告及び報告書の執筆を行った。
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