21年度の課題は、ドイツの労働市場・最低生活保障改革の現状を解明することであった。協約による賃金を保障する労働機会を失業者にどの程度創出できるのかは、2005年のハルツ4改革の評価にとって重要である。すでに低賃金の雇用を創出し、最低年活にみたない部分を失業手当IIとよばれる給付で補うことがひろまっている。失業手当IIを、失業者だけではなく低所得就業者が受給しているわけである。 このような低所得就業者の拡大に歯止めになりうる司法判断が、2009年12月に州労働裁判所で脈遣労働に関してだされた。それは、派遣は確かに一定の雇用を創出してきたが、派遣労働者の組合連盟はどんどん低い賃金での協約を締結してきたため、従来から批判をうけてきた。そうしたなかで、州労働裁判所は、組合の協約締結能力を否定する判断を示した。これは、失業者に対する雇用創出にとっても重要な判決である。この判決は、雇用保険をはじめとする社会保険法にとっても、合法的な協約による賃金をベースに保険による保障システムを構築することが確認され、これまでの運用を是正させる契機を与えている。 今年度は、ドイツでは弾力的に雇用をつくりだすという動きが促進きれる一方で、それに対する是正の動きが労働関係でも生じていること、そしそ社会保障法にも大きな影を与えることを確認した。22年度は、この問題を解決する手がかりが、失業手当II受給者に対する就労支援にいかに結実していくのかをみきわめることにしたい。
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