わが国では、2011年10月1日から求職者支援法が施行され、雇用保険が切れた人、非正規で雇用保険に加入できない人、自営業の廃業、学卒未就職者等が対象になる。つまり、求職者支援法は、雇用保険が使えない求職者を対象とする制度とされ、雇用保険法に劣位する関係にある。そこで、2011年度は、雇用保険の適用対象者をめぐる争訟を、とくに雇用保険の裁決例の分析をおこなった。雇用保険の争訟はそれほど多くはないが、裁決を含めると、「就業」の実態を踏まえて実効的に救済されている事例があり、興味深い成果が得られた。たとえば、「請負」等に対する適用は否定される傾向にあるなかで、利害関係人の就業の実態を詳細に認定し、報酬(時間給)、業務内容の高度の裁量性の有無、勤務場所、勤務時間の拘束等から、雇用保険法の被保険者と認めるとの結論が導かれているものがある。 また、雇用保険法33条による給付制限定が適用されると、失業者の生活に大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。最近、労災保険法でも義務付け請求が認容されたが(大阪高裁平成24年2月23日判決)、失業労働者の所得保障の重要性を考えれば、実効的な権利救済が雇用保険にも必要であるといえよう。雇用保険においても争訟方法を検討することは緊急の課題であると確信した。 他方で、本研究では、ドイツで20O5年に実施している求職者基礎保障法(社会法典2編)の動向も視野に入れ、比較検討した。多様な長期失業者に求職者基礎保障法が適用され、フルタイムでの就労や職業訓練が困難な求職者にも、最低生活保障が機能しており、わが国の求職者支援法への示唆が得られた。
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