本年は、研究年度の2年目にあたることから、昨年に引き続き、競争法違反行為に基づく損害賠償請求にかかる諸問題に関して、ヨーロッパでの議論の動向を、主として論文等に基づき調査研究する一方で、アメリカにおける状況についても調査研究を深めた。 具体的には、EUにおいて始められていた競争法違反行為に基づく損害賠償請求にかかる立法の進捗状況について、ルーヴァン・カトリック大学(ベルギー)ステファニー・フランク教授およびトゥールーズ第一大学(フランス)シルヴェーヌ・ペルツェット教授と密に連絡を取り合いつつ、情報のアップトゥーデイトをはかった。その一方で、ローマII規則に定められた準拠法規定にかかる研究や、ブリュッセルI規則下での本課題の問題点についての研究も進めており、この点に関して、長田が平成22年6月の関西国際私法研究会で、本研究課題にかかる報告(競争法違反行為に基づく損害賠償請求の国際裁判管轄権-Provimi判決を下に)を行った。このような現状でのEU法の動向を研究することは、立法措置を検討していない我が国の議論について、非常に大きな意義を有すると考えられる。 他方、アメリカの判例研究は、外国取引反トラスト改善法(FTAIA)の判例を中心に猟渉しているところであるが、数が大変に多く、データベース化に当初想定していたより時間がかかっている。FTAIAは、競争法違反行為に基づく損害賠償請求の国際的な側面について非常に重要な規定であるにも関わらず、これまで日本で、まとまった研究がされてこなかったこともあり、この判例データの集約、解析は、きわめて重要な価値を持つものと思量する。 これら現在までの研究の進捗状況および成果は、研究代表者研究分担者間で、定期的に打ち合わせを行うことにより、できる限り共有するようつとめている。
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