研究概要 |
本研究は、福祉サービス関連の法定権利擁護機関が機能・権限・役割に関連して抱える課題につき、実態調査を踏まえ法的視座から検討することにより、社会保障法における権利擁護通則を構想し、さらに通則の視点に基づき法定権利擁護の再構築の方向性を検討することを目的とするものである。 本研究は3年の研究期間で本研究課題を遂行するため、法定権利擁護機関を次の三つの柱で検証している。成年後見と日常生活自立支援事業の移行(リエゾン)、虐待防止、苦情解決である。これは各年度における主たる研究対象分野でもある。 そこで、平成21年度は成年後見と日常生活自立支援事業の移行に関する研究を主たる対象とし、特に、社会福祉協議会(社協)が法人後見を行う場合の法的問題を検討した。 その結果、社協が安価な報酬で組織的に法人後見を実施することにより、その移行を円滑に行う事業を展開すべきであるとの結論に至った。なぜなら、日常生活自立支援事業利用者は加齢とともに当該事業の利用が困難になり、成年後見制度への移行が不可避となるものの、その受け皿となるべき成年後見制度は、制度設計上の問題および担い手不足により,効果的に機能しえていないからである。しかしながら、社協が実施する場合、利益相反を回避する組織体制の整備、危機管理体制の整備、市町村社協・都道府県社協の関係を中心とする運営体制の構築、担い手と財源確保など多くの解決すべき課題があることが分かった。これら課題の解決の過程で、権利擁護通則の構想と、それに基づく法定権利擁護機関の機能・権限・役割の再構築を図ることができるであろう。 よって今後は、平成22年度計画と平行して、これら課題への具体的な解決策の研究発表を行っていく。なお、本研究課題に関する研究発表については、下記学会発表のほか、雑誌論文および図書に関し、入稿済みのものがあるが、本報告書作成時点では公刊されていないため、これらは次年度報告書に記載することになる。
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