本研究は、福祉サービス関連の法定権利擁護機関が機能・権限・役割に関連して抱える課題につき、実態調査を踏まえ法的視座から検討することにより、社会保障法における権利擁護通則を構想し、さらに通則の視点に基づき法定権利擁護の再構築の方向性を検討することを目的とするものである。本研究は3年の研究期間で研究課題を遂行するため、法定権利擁護機関を次の三つの柱で検証した。成年後見と日常生活自立支援事業、虐待防止、苦情解決である。これは各年度における主たる研究対象分野でもある。 最終年度である平成23年度前半期は、主に苦情解決をテーマとし、その法定権利擁護機関の機能・権限・役割の検証を行った。この成果を栃木県運営適正化委員会における苦情解決責任者・担当者に対する研修や『知的障害者施設における苦情解決のあり方』(平成24年5月発刊予定)に生かすことができた。後半期は社会保障法における権利擁護通則の検討と、それに基づく法定権利擁護機関の再構築に当てたが、この部分についての研究成果の発表には今後3ヶ月を要する見込みである。 また、本研究の成果を共著ながら図書として刊行することもできた。後掲の『社会保障論〈第2版〉』においては、「社会保障と権利擁護」などを執筆し、『社会法の基本理念と法政策』では「権利擁護の将来像と公的責任-成年後見制度を中心に」を執筆したが、いずれも本研究により得られた知見を活用したものである。
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