研究課題/領域番号 |
21530058
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吾郷 眞一 九州大学, 法学研究院, 教授 (50114202)
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研究分担者 |
韓 相熙 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30380653)
山下 昇 九州大学, 法学研究院, 准教授 (60352118)
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キーワード | ILO / 国際労働基準 / 実施の監視 / 条約解釈 / コントロール / 条約勧告適用専門家委員会 / 三者構成 |
研究概要 |
本研究はILOの根本的な活動である国際労働基準の設定とその監視について、とりわけその監視機構の法的判断を総合的・体系的に分析することにより、どのような条件が整った場合に、監視機構による一連の判断が説得力を持つようになるのか、逆にどのようなときにそれは実体国際労働法としての価値が乏しくなるのか、実質的な判例法の形成がILO基準全体の拡充にとって(さらに広く国際人権法の拡充にとって)どのような意味を持つのかを解明しようとするものであった。ILO条約勧告適用専門家委員会の意見(observation)を中心とする監視機構の判断の積み重ねを精査した結果、一定の問題については一貫した判断基準が示され、また、年を経るにつれて基準の指標の取り方も変わっていくことが検証された。また、50年を超える同じ判断の継続は、総会基準適用委員会との協働を経て一種の判例法を形成するに至っていることも確定できた,。それらが成立する条件としては、ILOという三者構成の国際機構が持つ特殊性と、90年を超える実行の蓄積、及び手続の完備が大きく影響していることが分かった。すなわちプロセスの拡充が実体法である国際労働基準も結果として拡充することを意味する。最終的に本研究が目指したのは、プロセス重視の国際法定立理論であったが、プロセスに正当性があり、説得力がある場合には、法源性、実定法性に脆弱性がある場合にも、十分に法として機能することを明らかになった。プロセス重視の国際法定立論が多く議論されてくるようになってきているが、本研究はその議論をさらに強化する実証研究といえる。
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