研究概要 |
前年度に着手した著作権侵害罪に関する研究を総括し,その後,情報財の保護のあり方として,その管理・支配という外形的保護の問題と情報内容の価値の保護の問題があり,従来は,両者の保護のあり方は,ほぼ同様のものであり,管理・支配の保護によって情報内容の保護が図られてきたものの,情報通信技術の進展は,両者の保護のあり方を分断し,それぞれについて独自の保護の必要性を要求しつつあるとの所見を,法哲学的な見地および比較法的見地より適切といえるかどうかを調査・研究を行なった。 そこから,かつての身体の所有と同様に,人間の人格的自律的判断より創出されるものは,同様に個々の人格に帰属されるべきこと,ただし,情報化社会においては,情報のそのような帰属と現実の情報の管理が必ずけしも一致しないことから,情報の支配に対する法的保護をも要請されるとの帰結をえた。 また,より個別・具体的な問題として,情報セキュリティの侵害にかかる事件が頻発したため,情報セキュリティとの関係において,そのような考えの妥当性を検証することとなった。 なお,年度末に,国際会議に出席し,その折りに海外の研究者と議論をする予定であったが,会議が翌年度に延期されたこと,地震等の影響に鑑みて,翌年度に実施する予定であった総括的な検討のための資料収集とその分析を前倒しして行なうことにした。
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