本研究では、裁判員制度の導入が量刑に与える影響ついて、1.科刑状況の変化の検証、および、2.量刑基準の理論的検討、の二つのアブローチから検討をすすめる計画である。このような計画にしたがい、2009年度においては以下の活動を行った。 1. 科刑状況の変化の検証について 裁判員制度による科刑状況の影響が統計データに反映されるのは、2010年以降である。したがって、2009年度においては、裁判員制度導入前の統計データを収集することとし、まず、司法統計年報の2007年以前の科刑状況に関するデータを収集した。 また、司法統計年報は1999年から罪名別の集計がそれ以前に比べて概括的な(粗い)集計方法に変更されたため、これを補うために検察統計年報における罪名別起訴人員(こちらは1998年以前の司法統計年報と同じ詳細さを維持している)を利用することを考えた。そして、このような法により、裁判員制度導入前の科刑状況を把握するために、1999年~2007年における殺人の罪、強盗傷害の罪などについて科刑状況を分析した。この成果は、2009年の日独シンポジウムにおいて発表すると同時に、2010年に公刊される予定である。 本研究において利用する統計データは、基本的には司法統計年報とすることとしたが、これを補完する他のデータの利用可能性を追求することとし、その候補として愛知県弁護士会が作成・運用する量刑データベースを調査した。 2. 量刑基準の理論的検討について 2010年以降の本格的検討に備えて、裁判員制度あるいは量刑基準に関する文献資料を収集すると同時に、研究会等に参加して、量刑に関わる研究者および刑事裁判官などの実務家と意見交換を行った。
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