本研究は、告知者のための訴訟告知という本来の制度趣旨を基盤として、参加的効力を既判力の特殊形態=当事者間の訴訟物の有無について生じる既判力の付随的効力である遮断効と位置づけ、このような既判力による遮断効が、特定の争点について共同戦線を張るべき告知者・被告知者間に限定して、主観的に拡張されるという理論的な再構築を目指すものである。 平成22年度においては、平成21年度と同じく本研究の目的を達するために従来の法律解釈学が採った方法により、訴訟告知制度の沿革を辿るべくドイツ法及びローマ法に関する資料を収集し、閲読・咀嚼することに努め、また、これらに関する先行研究においてなされてきた議論の主眼点を探った。 図書資料については、日本の民事訴訟法の母報告であるドイツにおける訴訟告知を論じたもの、及び、ローマ法における訴訟告知を論じたものを中心に選定した。 さらに、神戸大学大学院法学研究科教授・八田卓也教授を招いて研究会を行い、専門的知識の提供を受けたほか、本学の菱田雄郷准教授及び内海博俊准教授による活発な議論により、当事者引き込みという視点からの議論について多くの示唆を得た。多数当事者紛争における当事者引き込み制度という視点から訴訟告知の要件論を考えるという斬新な知見を得ることになった。なお、最新の文献として、菱田准教授による「口頭弁論終結後の承継人に対する既判力の作用」(法学74巻6号(2011年1月)170頁は、既判力の主観的拡張の議論において、両当事者以外の第三者に既判力が及ぶことの意味について有意義な検討があり、訴訟告知による参加的効力を理解するうえで重要な示唆を得ることができた。
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