初年度は、各所蔵機関での現物調査を中心とした基礎データの収集と分析作業をおこなうこととしていた。実際には、総ての所蔵機関を訪ねることはできず、東北大学、法務図書館、東京大学、一橋大学、九州大学における所蔵状況の調査にとどまった。これは、各大学等で行われていた耐震対策のための改修工事と調査が重なったことなどによる。マイクロ複写がすでに作成されている法務図書館セットについては、そのマイクロ複写を手に入れることができ、東京大学所蔵資料についても、そのいくつかを複写させていただいた。また、商事法務研究会によって覆刻されたいわゆる「商事法務版」との対比を行い、基礎データを作成している。 現物調査を行ったものについては、総てではないものの、所蔵先・簿冊名・丁末表示・奥付・写了日(記載あるもの)等のデータ一覧も作成しているところである。 今年度の調査で判明した最大の情報は、一橋大学に所蔵されている資料が、基本的に二部づつ存在しているということである。一橋大学には、資料の作成主体である学術振興会旧蔵本が所蔵されている、とされてきたが、これとともに、一部に「司法省○」という張り紙がはられた一群の所蔵本が存在したわけである。したがって、これまで全部で8セットあるとされてきた学振版資料は、9セット存在することが判明した。 今後は、データ一覧の作成を継続するとともに、今年度に調査することができなかった大学の所蔵状況を調べる予定であり、あわせて、資料作成時の司法省旧蔵資料との対照を行う予定である。
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