平成21年度および平成22年度に続いて、ファイナンスの分野に知力を有する学生の協力を得ながら、全部取得条項付種類株式の利用状況に関して、事案の調査を行った。具体的には、新規の事案を追加して取りまとめるとともに、過去の事例についての情報の確認作業を行った。 平成23年度の調査において調査の対象とした利用例をみると、これまでの調査と同様の傾向にあり、全部取得条項付種類株式制度を、いわゆる100パーセント減資のために利用した事例は、少なくとも上場企業では存在しておらず、MBOなどに利用された事例が大半であった。買取価格の決定という形で、裁判でも多くの事例が争われ公表されているが、価格の決定の方法などについては実務でも定まっていないという状況も続いている。 濫用的なスクイーズ・アウト(少数株主の締め出し。近時は、「キャッシュアウト」と表現されることが多い。)が可能となってしまっており、価格決定申立請求権のみでは十分な救済になっていないことが課題とされるようになった。法制審議会会社法制部会でも、この点について問題提起がなされ、対応策などが検討された。平成23年12月に、「会社法制の見直しに関する中間試案」が示され、パブリック・コメントに付され、平成24年2月からは、改正要綱案の取りまとめに向けて、第三読会が始まっている。 同部会の議論のみならず、各界の意見についても広く集めて、今後の立法の方向性について考察を行った。
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