本研究の目的は、日本の民事訴訟制度に関する一般市民の意識を調査し、先に実施された民事訴訟の利用者調査と比較すること、および2003年に本調査と同様な形で実施された意識調査との経年比較を行うことにより、民事訴訟制度改革のための基礎資料を提供することにある。21年度前期においては、調査票および調査計画の作成をなし、11月に全国20都市、各200人合計4000人に対する郵送調査を実施した。回収率は40%を超え、郵送調査としては高い回収率を納めることができた。 本年度は、そのデータを用いた分析を行った。分析の内容は、2003年度に行った今回の調査と同じ内容の意識調査および2000年および2006年の民事訴訟利用者調査である。分析の結果、2003年の一般意識調査との経年比較においては、裁判官や訴訟手続に関する評価について、肯定否定の両面に関し極端な評価が減少し、より慎重な評価が増えるなどの精緻化現象が生じている可能性のあるといった興味深い知見が得られたほかに、利用者調査との関係では、従来同様、弁護士評価においては利用者調査が、訴訟手続、裁判官評価においては一般意識調査の方がそれぞれ高いことが確認された。それらの分析の一部は、近々刊行予定の東北学院大学の紀要に掲載予定であるとともに、23年6月にサンフランシスコで行われるアメリカのLaw & Society学会で報告を予定している。なお、23年度はさらにこれらの関係の原因についての分析を深める予定である。
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