本テーマに関する研究の初年度であるため、主として文献の収集や分析、インタビュー調査に時間を使った。具体的には、日本がつねに比較法の対象としてドイツを選択してきたこととの関連で、ドイツのフライブルク大学に行き、同大学における、ドイツ・外国民事訴訟法研究所で上記の仕事にあたった。研究所の所長であるシュトゥルナー教授には、インタビュー調査を始め、文献収集において協力を得たところである。その分析を進めているが、現在までのところ、手続保障や審尋請求権に関する判例、学説のフォローに努めている。日本においては、ドイツとは異なり、審尋請求権を明文で憲法が定めているという状況にはない。そのため、審尋請求権という概念は認められているものの、その違反に対して、憲法の直接適用を認めるとの解釈ができるか、議論の足るところである。そこで、これを当然として認める、ドイツとの対比が重要な課題となると考えた。そこで主として、ドイツ連邦憲法裁判所の判例が憲法違反としたケースについての分析を行っているところである。これにより、単純法違反(法令違反)と憲法違反の区別をどこで付けるべきかに関する日本法の解釈に当たっての示唆がえられるはずである。さらにドイツで近時の民事訴訟法の改正の際に導入された、審問異議(ZPO321a条、家事非訟法44条など)との関係についても調査を進める予定である。なぜなら憲法違反の主張を憲法裁判所の管轄とせずに、通常裁判所においてその審理を行うことを可能にした改正であり、憲法裁判所をもたない日本にとっても、参考とすべきテンがあると考えるからである。なお、日本においては、この条文の本格的研究は未だ十分になされていない。したがってその正確な小会に努めることは、日本の学会にとっても意義深いものであると考える。
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