平成21におけるドイツでの調査、資料収集に基づく課題に関する判例・学説の分析を行った。特に、審理原則として最も重要と思われる手続保障概念を中心とした研究を行った。その結果、論じ尽くされた感のある手続保障について、その最も根本的な、憲法上の基礎付けの面で、問題が残っていることが判明した。すなわち、日本においても、ドイツと同様に、手続保障の根拠は、憲法32条にあるとされるが、手続保障侵害の救済となると、憲法上の根拠は影を潜め、単なる法令違反として位置づけられているにすぎない。法令違反なのか、憲法違反なのかは、たとえば上告に際して、権利上告の対象となるか、上告受理の対象となるにすぎないのかで違いが現れるところである。そこで手続保障といっても、法令違反になる場合(通常裁判所の管轄に属する)と憲法違反になる場合(憲法裁判所の管轄に属する)とを区別することを必要とするドイツの議論が全く顧みられることがなかった理由を検討し、この問題に関する研究の必要性と主としてドイツの判例を分析することによる両者の区別の日本における解釈論的意義を検討することにした。その成果の一部は、平成22年度の日本民事訴訟法学会のシンポジウム「民事裁判の審理における基本原則の再検討」において「手続保障の課題」として報告したところである。その他、この問題の非訟事件における顕現にも研究の手を伸ばして、成果を発表した。非訟手続きにおける手続保障は、現在、非訟事件手続法ならびに家事審判法の改正作業が行われていることからして立法論的課題でもある。その意味で、本研究は、立法の際の議論に寄与することをも目指すものである。引き続き、平成23年度においてその成果を発表していく(すでに「上告理由と手続保障」なる論考を提出し、平成23年度中に公刊される予定である)。
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