本研究は、わが国における担保法制について、現時ないし将来において金融取引実務に不足ないし不備があると考えられる諸点を精査し、また、国際的な担保取引に対応することをも視野に入れつつ、これからのあるべき担保法体系について総合的かつ具体的に提示することをめざすものである。その手がかりとして、本研究において主要な検討対象とするのが、2007年12月に国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)総会において承認・採択された「UNCITRAL担保取引立法ガイド」である。 研究初年度にあたる平成21年度は、UNCITRAL立法ガイドについて、まずはその内容を精読し、また起草作業の過程、議論をたどることに努めた。その結果として、同立法ガイドの策定にあたっては、アメリカUCCの影響をもっとも強く受けたものであることがあらためて浮き彫りとなった。とりわけ、アメリカでは、包括担保を可能とする制度枠組みがとられているところ、同立法ガイドもそれを承継している点が非常に興味深い。この点、わが国では、包括担保を可能にするものとして、各種財団抵当制度が用意されているが、その利用はあまりなされていない。その原因として、流動化に対する配慮が十分でないことが、UCCあるいは同立法ガイドとの比較からも明らかになった。
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