本研究は、人身傷害補償保険契約の法的性質とこれに適用されるべき規範を明らかにし、加えて、同保険契約に基づく請求権代位の在り方に関する解釈論争に説得的な指針を提供することを目的とする。 本研究は、その第一段階として、主要損害保険会社の人身傷害補償保険契約の約款を収集するとともに、各社の運用実務、とりわけ、被保険者に生じた人身損害の損害額の査定および加害者ないしその責任保険会社に対する代位求償権の行使(請求権代位の実施)の状況を、各社の実務担当者からのヒアリング等により調査することを企図していた。平成22年4月1日の保険法施行に合わせて損害保険各社は約款改訂を行っているところであったが、約款の収集については相当程度、実務担当者からの情報収集については一部実施することができた。 また、この作業と並行して、平成21年度は、自動車保険制度についての理論的研究や、平成22年4月1日からの「保険法」の施行により、損害保険実務がどのような影響を受けることになるかについての基礎的研究も行った。論文「自賠法16条の3第1項の法意」(旬刊商事法務に掲載予定)は、前者の研究成果の一部であり、著書『保険法〔第3版〕』および論文「建築家賠償責任保険契約の被保険者について破産免責許可決定が確定した場合に、被保険者の債権者が債権者代位権により保険金の支払を求めることができないとされた事例」は、後者の研究成果の一部である。
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