研究課題/領域番号 |
21530084
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
前田 雅弘 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50240817)
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研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 定款自治 / 公開会社 / 種類株式 / 発行可能株式総数 |
研究概要 |
平成17年制定の会社法は、全株式譲渡制限会社と公開会社とで、相当に異なった規律を採用しており、その違いの多くは、全株式譲渡制限会社について、公開会社には認められない定款自治を認めるという点に存する。そこで本研究は、大きくは全株式譲渡制限会社と公開会社とに区分をして検討を進めている。平成21年度および22年度は全株式譲渡制限会社の機関関係および株式関係の問題について、平成23年度は公開会社の機関関係の問題について、それぞれ考察を行ってきたのに続き、本年度は、公開会社を対象に、株式・新株予約権関係の問題を中心として、主に次のような問題について考察した。 種類株式制度に関しては、会社法の下で定款自治が推し進められた結果、定款自治の範囲が広すぎ、濫用的な利用がされるおそれのあることが明らかとなった。とりわけ、全部取得条項付種類株式の制度が少数株主の締出しの手段として利用されるようになっているところ、このような利用の仕方は制度導入時には想定されていなかったものであり、少数株主を害するおそれがある。 また、定款所定の発行可能株式総数に関しては、これが発行済株式総数の4倍もの比率で認められることから、取締役会が支配権変動を伴う大量の新株発行を決定し、これによって既存株主の利益が害されないかが問題となる。さらに、発行可能株式総数は株式併合の影響を受けないという解釈が会社法の下では通説となっているところ、株式併合の結果、発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を大きく超える状態が生じ、取締役会の新株発行権限が過大になるという問題がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年9月に法制審議会総会において次期会社法改正のための要綱がとりまとめられた。同要綱における会社法制の見直しの対象には、本研究の扱う課題も含まれることから、同要綱の内容の当否について検証を行い、さらなる改善を要しないかを検討する必要があるが、十分に検討を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
次期会社法改正のための要綱で取りあげられた事項のうち、定款自治の観点からさらなる改善を要する事項はないか、また、同要綱で取りあげられなかった事項のうち、見直しを要する事項が残されていないか、さらに考察を進める。
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