国内における研究としては、昨年度から引き続き、会社分割と事業譲渡の比較研究と並行して、労働法関係の検討も進めてきた。その成果は、阪大法学61巻に「判例にみる濫用的会社分割と債権者・労働者の保護-事業承継をめぐる解釈論の限界-」としてまとめることができた。この課題は、目下、会社法改正の中心部分の一角をなすものであり、かねてからの主張が改正法として具体化しつつある。これは本研究の大きな成果ということができる。また、会社分割が詐害行為に当たるとしてその取消が認められたユニ・ピーアール事件高裁判決についても、早稲田大学商法研究会において研究報告をすることができたのも成果に加えることができる。 海外における調査研究としては、平成21年度から22年度にかけて、これまでのアメリカ、フランスにおける文献調査および実態調査を実施したが、これに引き続いて、当初の計画通り、本年度はドイツでの文献調査および実態調査を実施した。具体的には、ミュンヘン大学およびマックスプランク研究所において、企業再編と債権者・労働者保護に関する資料を収集するとともに、現地の研究者および法律実務家との意見交換が実現した。ドイツにおいても、アメリカ法研究との関係で、ワシントン大学の研究者とも合流し意見交換をすることができたことは、研究上有意義でこれも大きな収穫であった。また、ミュンヘン所在の法律事務所との研究協力関係の構築も実現でき、これも今後の研究に繋がる成果である。
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