研究概要 |
本研究は,今次破産法改正において,立法的手当てが行われた相続財産破産につき,その意義の確認と利用促進を目的として, ヒアリング調査を主眼とした実証的分析を行うものである。民事訴訟法学においては,これまで,限定承認等の清算手続に対する相続財産破産制度の優先性とその利用促進が説かれてきた。本実証研究は,そのような学説の意義をあらためて検証し,今後のあるべき相続財産破産制度を考える一歩とすることを目的とする。 今年度は,まず,複数の弁護士にインタビューした事項を,これまでの通説的理解とつきあせて,理論的な問題を整理したものとして,「破産者死亡の場合における破産財団の範囲-自由財産と新得財産の処理に関する一考察-」と題する論文を,阪大法学59巻247頁-263頁(2009年)に掲載した。 平成21年9月4日,佐藤俊弁護士(大江橋法律事務所)から,「倒産法における債務--超過概念について」と題する研究報告をいただき, 意見交換を行った。田中亘准教授(東京大学)から,「倒産法における担保権の取扱い等について」という題目で研究報告をいただき,倒産裁判官および弁護士,公認会計士と意見交換を行った。また,河崎祐子准教授(東北大学)より,「倒産法における計画外事業譲渡について」と題する研究報告をいただき,倒産実務家を交えて意見交換を行った。これらは,倒産法の基礎理論とかかわる項目であり,相続財産破産制度を理論的に分析する上でも,関連性を持ち得るものである。 海外調査として,平成21年11月に,ハーバード大学において,Jeese Friend教授と,Lynn Lopucki教授に,アメリカの倒産法の動向および相続財産の処理の仕方等について,インタビューを行った。
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